水谷貴美子
 母が逝(い)ってから5年、寂しさは癒(い)えないけれど、ひとり暮らしにはそれなりに慣れてきた。
冷蔵庫の扉の前で、さて「何?」と立ち尽くしたり、リモコンの行方不明に戸惑ったり、
捜しものにこと果てたりは日常茶飯事(にちじょうさはんじ)、76という齢(よわい)をひしと感じている。歳を重ねるごとに月日の経つ速さを実感しているものの、ここ1、2年は時間が停まっている。
無かったものが有った、有ったものは廃棄したと国会の嘘偽り、虚偽答弁(きょぎとうべん)、
隠蔽(いんぺい)、改竄(かいざん)、文書の改竄(かいざん)、捏造等々(ねつぞうとうとう)を知る
につけ、時系列(じけいれつ)さへ分からなくなり何を信じてよいのか分からなくなって1年余。
辺見庸(へんみよう)のブログをみていて見つけた詩がよぎる。『時間が時計からとびだして、
その前に立ち、正しく進むように命じ
た』(パウル・ツェラン 逆光より)分からないことに慣らされて、気がつけば「いつか来た道」へ
誘導されていたということにならないだろうか。
◆短歌(旧仮名遣い)
◆前夜なり 過去の時間が追ひかけて未来を喰(く)つて居すわつてゐる
元文科事務次官前川喜平氏は「有ったことを無かったことには出来ない」と言い切った。
けだし(たしかに)名言。何人もの前川氏が表れてほしい。
現政権の下、障害者が65歳になると介護保険優先という下に、昨日までの無料の
障害保障福祉サービスは打ち切られ、1割負担となる。
◆「優先」とふやさしき用語に障害福祉切り捨てらるる65歳
岡山の浅田達雄(69歳)さんが2013年にサービスをもとに戻すよう訴えて裁判を起こし、
2018年3月に全面勝訴した。
何も信じられないけれども政治に一条の希望の光をみた。
しかし、岡山市は控訴(こうそ)したのだ。
◆きりきりと虹の立ちたる視野の先 泣くな怯(ひる)むなまた闘(たたか)はむ
私の折り返し点はとうに過ぎ、これから先の暮らしに展望はない。
「生きてある証(あかし)」を刻んでいきたい、と思うものの…出来ることが限られていく。
せめて、あと5年は現状維持でとの願望を託し3年日誌が終わった今年、5年日誌にした。
◆身めぐりの些事掬(さじすく)ひあげ数行を日誌に記(しる)し足りて眠らむ